ロジカルシンキング(論理的思考)はビジネスシーンで重視されているスキルです。

コンサル系、企画系、システム開発などの職種で必須スキルといわれていますが、成果を出したい営業にも必須スキルといえます。

ロジカルシンキングの細かな解説は専門書をご覧いただくとして、こちらの記事では営業場面で活用できる「MECE」と「ロジックツリー」について、どう活用すればいいのかを説明していきます。

ロジカルシンキングとは?

ロジカルシンキングは「論理的思考法」ともいわれ、物事を結論と根拠に分けてその論理的なつながりを捉えて物事を理解することです。

ここでは営業に活用できる内容を深ぼっていきたいので、ロジカルシンキングの詳しいお話は下記のリンクなどをご参考にしてください。

ロジカルシンキングとは by リクルートマネジメントソリューションズ

営業場面で活用できるのが、「MECE」「ロジックツリー」の2つのフレームワーク思考法です。 「MECE」と「ロジックツリー」は詳しく解説します。

MECEとは

MECEは「Mutually(お互いに) Exclusive(重複せず), Collectively(全体に) Exhaustive(漏れがない)」の略で、「ミーシー」もしくは「ミッシー」と読みます。 「モレなく、ダブりなく」と一言で説明されることが多いです。

「モレなく、ダブりなく」のなにがビジネスの役に立つかと言いますと、 複雑にからみあった事象を論理的にかつシンプルに分解し、分解した小さな要素ごとに検討を積み上げていことで、問題や課題を整理して解決策を見いだすことができます。

具体例として、あるスイーツがバカ売れしています。

どういった人たちが買ってくれるのかを調べようと思った時、どういう切り口で分類しますか?

男性か女性か。あるいは年齢が20代以下、30代、40代、50代、60代以上のどの層か。

この分類はいわゆるMECEな状態です。

もしこれが「男性と女性と子供」という切り口だとダブりが発生しますし、「20代、40代、60代」という切り口だとモレが発生します。

MECE
MECE
モレあり
モレあり
ダブりあり
ダブりあり

ダブりやモレが発生すると、問題や課題を正確に把握できなくなります。

特にビジネスにおける問題や課題は、大小さまざまな要因が複雑にからみあっていることが多いため、MECEを用いてシンプルに切り分け、細分化して考えることで、本質的な問題は何なのか整理することができます。

ロジックツリーとは

ロジックツリーは、ある事象を体系的に分解(ブレイクダウン)していくための思考ツールです。

問題解決において、本質的な問題がどこにあるのか絞り込んでいったり、課題の解決策を洗いだす際に活用できます。

上位概念を下位の概念に分解する際にMECE(モレなくダブりなく)を意識して分解します。

参考に下記の図をご覧ください。

このようにテーマを決めて、構成要素を因数分解していくことで、複雑に絡みあう問題や課題を紐といていくことができます。

ロジックツリーを使うメリットは下記の点が挙げられます。

メリット
  • 全体を把握し、論点のズレをなくす
  • 問題を深掘りして原因を特定できる
  • 解決策を導きだしやすくなる
  • アクションの優先順位づけがしやすい
  • チームや関係者と共有しやすい

営業でロジカルシンキングが重要なわけ

営業に限らずあらゆる場面でロジカルシンキングは役に立ちます。 ここではあえて営業という視点でロジカルシンキングがなぜ重要かをいくつか解説します。

見込み顧客の潜在的な問題・課題を顕在化できる

企業の経営者や幹部は設定した経営目標を達成するために多くの複雑化した問題や課題に向き合っています。

経営者や部長が口にする問題や課題というのは、そのごく一部であったり、もしくは問題の表面しか捉えられていないことがあります。

営業は顧客の真のお悩みを掘り起こし、その解決策として自社の製品やサービスを提案するわけですが、 お悩み自体がズレていたら当然その提案は刺さりません。 ヒアリングの中で顧客から状況をヒアリングし、表面的な問題やお悩みを聞くだけでなく、本質的な問題点を顧客に提示して共感を得ていくことで、提案が刺さるというものです。

事象を分解して深掘りするロジックツリーは、本質的な問題点にたどりつくための有効な思考ツールとなります。

顧客の優先順位を確認できる

ロジックツリーのメリットとして、「アクションの優先順位づけがしやすい」ことを挙げました。

それぞれの要素に対して、解決に向けたアクションを一覧化できるので、「どのアクションが一番効果的か」「どのアクションなら早く取りかかれるか」など、優先順位がつけやすくなります。

ここかなり重要です。

あなたの提案が顧客の悩みを解決できるものであったとしても、顧客の頭の整理が追いついていないと受注にはいたりません。

顧客の頭の整理を手伝うという意味もこめて、考えうる選択肢を提示し、その中で自身の提案が今取り組むべきことだとご納得いただく、もしくは共感いただく必要があります。

そんなとき、ロジックツリーでMECEに整理された内容をもとに背中を押すことができれば、きっと受注確度を高められることでしょう。

顧客内でのコンセンサスを得やすくなる

顧客の担当者が「いい提案だ!」と思ってくれたものの、社内コンセンサスがえられずに失注・・・

営業現場ではよくあることですよね。 担当者は納得してくれたものの、担当者がその上司を納得させられなかったパターンです。

顧客の担当者が上司に説明できる材料を提供できていないことが失注の要因としてあげられると思います。

ここで活かせるのがロジカルシンキングです。

営業担当のあなたと顧客の担当者ではそもそも提案の前提情報量にGAPが発生します。 あなたは担当者の疑問や懸念をきちっと説明できるかもしれませんが、担当者は上司に質問された時に前提の情報量が少ないのでロジカルに説明ができないこともあるでしょう。

そんな時、ロジカルシンキングを使って網羅的に選択肢を提示し、その中でなぜ自社の製品・サービスがお役に立てるか説明した資料があれば、上司を説得するのもたやすくなることでしょう。

営業での具体的活用例

一例として、実際に営業現場でMECEやロジックツリーをどのように活用しているか具体例をお伝えしていきます。

【ヒアリング時】業務プロセスの分解による問題の特定

扱う商材にもよりますが、業務プロセスを分解することで顧客が抱える問題がどこにあるか特定できることがあります。

例えば営業代行を提案するケースで考えてみましょう。

顧客の営業部長から「ここ最近新規開拓数が伸びない」と相談がきたとします。 さてあなたならどうしますか?

具体的な提案をする前に、まず伸びていない原因を特定したほうがよさそうですね。

ではその原因はどうやって特定できるのでしょうか?

答えは業務プロセスを分解して、どこがボトルネックかを検証することで原因を特定できます。

そのためにはクライアントの営業業務プロセスを一通りあらいだすためのヒアリングを行います。

業務プロセスができあがったら、ボトルネックがどこにあるのかクライアントとディスカッションを重ねましょう。

できれば数字ベースで確率が下がっているフェーズを洗いだせると最高です。アポ率なのか、提案率なのか、クロージング率なのか・・・

ここで大事なのはMECEで業務プロセスを洗いだすことです。モレがあるともしそこがボトルネックだった場合、 どんな施策を講じても成果はあがらないでしょう。

業務プロセスが洗いだし、あきらかに数字が落ちているフェーズが判明できました。

次はロジックツリーを使ってなぜ数字が落ちているかの原因を特定していきます。

例えば、アポ率は下がってないのにアポ数が減っているとします。 つまりはアポに向けたアクション(アウトバウンドならコール数)が足りていません。

コール数が足りてない要因は何でしょうかと分解しますと下記のロジックツリーができあがりました。

営業部長とディスカッションを重ねると、おそらく原因は受注増で顧客フォローの負担が増え、 営業担当が新規開拓のアクション(アウトバウンドコール)が起こせていないことが原因のようです。

であれば、「弊社でインサイドセールスチームを組成してリード獲得を代行し、御社の営業の方が商談に注力できるようにしましょう」といった提案ができます。

ここまで分解して問題を特定でき、かつ共感までいただければ、受注はグッと近づくのではないでしょうか。

【クロージング】ボトルネックの特定

提案では好感触だったのに、なぜかなかなか発注してもらえない。営業ではあるあるですよね。

クロージングは色々なテクニックが本やネットで紹介されてますし、参考になるものが多いです。

ただどんなテクニックを使おうが、発注いただけない原因を特定できなければ受注にはいたりません。

ボトルネックを特定して解消に向けたアクションを起こすのに、MECEとロジックツリーは活用できます。

まず洗い出すべきはどこで止まっているのか。部長なのか、役員なのか、もしくは社長決裁なのか。顧客の決裁フローの確認です。

どこで止まっているかが分かれば、なぜ止まっているのか確認です。

よくあるのは担当者と決裁者でニーズ(優先順位)が違っているケースです。

担当者は機能で選ぶけど、決裁者はROIで選ぶといった状況です。

顧客の担当者を味方につけておけば、こちらからボトルネックの候補をいくつか提示すれば先方も回答してくれるでしょう。

クロージングは詰将棋に近いイメージです。。

受注というゴールに向けて、どこで(Who)なぜ(why)検討が止まっているのかをロジカルに一つずつ解消していくことで受注確度はグッと高まっていきます。

【マネジメント】KPI設定とPDCA

あなたの営業現場ではどのようなKPIが設定されているでしょうか?

受注数、粗利額、粗利率・・・・

もっと細かく電話数や訪問数といったKPIが設定されているところもあるでしょう。

PDCAについては詳しくは別記事で書こうと思いますが、営業KPIの設定とPDCAによる営業トレーニングに、MECEとロジックツリーは大いに役立ちます。

参考例を挙げてみます。

このように分解すると、売上を上げるための要素はいくつもあります。

たとえば、営業部で売上トップの人と、いまひとつ売上が上がらない人で、各項目の数字を比べてみるとどうでしょう?

既存顧客のリピート率に差があるのか、それとも商談数に差があるのか。

商談数に差があるなら、リード獲得に差があるのか、商談化率に差があるのか。

商談化率に差があるなら、ロープレをしてセールストークを比べてブラッシュアップすることが解決策になるでしょう。

多くの営業組織をご支援させていただきましたが、KPI設計を目標設定とごっちゃにしている組織が多いなと感じます。

KPIをロジカルに分解して比較することで、PDCAによる営業力アップを実現する強力なマネジメントツールになります。

(まとめ)ロジカルセールスで営業をスマートに!

つらつらと書きましたが、MECEとロジックツリーは他にもいろんな営業場面で活用できます。

営業戦略づくり、戦術づくり、営業活動、営業マネジメントサイクル、カスタマーサクセス、営業ツールの構築などなど・・・・

ロジカルシンキングを活用できれば、より効率的で効果的な営業ができるようになります。

さらには、商談で顧客の話を引き出しながらロジカルにお悩みを整理して、提案の骨子まで伝えることができれば、顧客からの信頼をグッと得ることができるはずです。

営業には情熱や想いはとても大切です。 そこにロジカルさを加えて、スマートな営業を!